
容器がまわれば、地球がまわる

制作期間:2021年4月〜7月(3ヶ月)
制作人数:5人
担当:サービスデザイン/UI・UXデザイン/利益計画/プロジェクトマネジメント
リユース容器と広告を活用した循環型フードデリバリーサービス
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う、テイクアウトの需要の増加が結果的 にプラスチックごみ等の増加の問題を引き起こした。新たなフードデリバリーサー ビスである『Delicle(デリクル)』はその問題にストレートにアプローチする。最大の特徴は、 食事を入れる容器にリユース可能容器を使用することである。その容器を循環させることで、従来使用されていたプラスチック容器等の削減を実現する。依然としてプラスチックの容器を消費し続ける旧来のデリバリーサービスを見直し、Delicleでは料理の容器への広告の掲載や、より機能性の高い容器の導入、といった新たな戦略を打ち出すことで、来たるべき社会のサスティナブルなフードデリバリーの姿を構想した。
VIDEO PROTOTYPING
STORY BOARD

注文
1
配達
2
スマホアプリから商品を注文待ち時間に企業アンケートに回答し、
割引クーポンを獲得。
耐久性が高いリユース容器で
内容物が漏れることなく注文した商品が届く。
返却
4
使い終わったパッケージは玄関において撮影し、配達員が回収。
デポジットがクーポンとして返却される。
食事
3
出来立てに近い状態で食事を楽しめる。
PACKAGE









SERVICE MODLE
このサービスモデルでは容器を循環させるための維持費を確保するために他企業の広告を載せている。そのため、従来のフードデリバリーサービスと異なり、ステークホルダーとして広告を掲載する企業がある。また、ユーザーと企業へのサービス価値を高めるためにアプリ内でアンケート機能を設けている。このサービスモデル図では『delicle』とそのステークホルダー4者の関係を図で示している。

RESTAURANT

飲食店は、顧客や注文数の増加が見込める他、容器代が浮き、環境負荷を減らす取り組みによるイメージが向上する。一方で、デメリットとしては容器の洗浄をしてもらうことが挙げられる。初期5年で契約する飲食店では行わないが、それ以降については食洗機のレンタル等も検討していて、今後そうした施策での負担の軽減も検討している。
USER

ユーザーは既存のフードデリバリーサービスの利用者、環境問題やSDGsに関心がある者などがターゲットである。ユーザーはアンケートや返却の手間と引き換えに他サービス より安い料金で利用することができ、プラごみを捨てるという心的負担の軽減になる。さらに、複数回使用する容器であるため、丈夫でこぼれにくく使い勝手が良い。
COMPANY

企業は、広告費、容器代を払うことで 、インターネットで無差別に出す広告ではなく、 ターゲットを絞った広告やアンケートを出すことができる。また、容器にロゴの掲載を行ったり、このサービスに協力している企業として紹介されたりすることにより、環境に優しい取り組みを行う企業であるというイメージを与えることができるなど、イメージアップを図ることも可能である。
DELIVERY

配達員は、容器もあることで仕事数が増え、それに伴って他サービスより稼ぎも増加する。また、しっかりとした容器であることが保証されているため、こぼす心配をせずに配達することができる。
VALUE

社会的意義
プラゴミを削減するのは面倒だと感じる人が多い、フィールドワークを通しその原因は直接的なメリットを感じないからという事がわかった。一方で、環境問題対策としての再利用容器への関心が高いこともわかった。『delicle』はこのような消費者が環境問題へ取り組むきっかけとなり、社会全体の意識改革を行い、持続可能な社会へと導くという意義がある。
短期的効果

『排気ガス削減』
バイク配達を禁止し、自転車のみの配達に限定することで排気ガスを削減できる。

『個人のゴミの排出量削減』
フードデリバリーサービスを利用するたびに多量に出ていたプラスチックごみの排出が無くなる。

『利便性』
容器は回収員が容器を回収するため、
ゴミ出しの手間が減る。
長期的効果



『フードデリバリー市場の改革』
サービスを継続・発展させていくと、人々が安いサービスを求めてこのサービスを利用することが活発となると考えられる。また、フードデリバリーサービスに再利用可能容器が用いられていることや、フードデリバリーサービスに広告が関係し、アンケートや動画広告、配送料無料といった機能はもはや当たり前となると考えられる。
『社会意識』
このサービスが普及し、リユースパッケージが一般化することで統一して店舗全体で使うモノを環境に配慮した素材を使うようになる。また、利用者側も普段の生活でもプラスチック容器の廃棄に関して考えるようになる。
『社会全体のプラスチックゴミの排出量』
現在パッケージに使われているプラスチックごみの排出量は324万トン程度であるが、将来的には300万トンを切ると考えられる。政府の2030年のプラスチックごみ25%削減の目標にパッケージの産業において、達成はされないかもしれないが一定の成果がみられると考えられる。
PROCESS
目的:社会課題を解決するためのサービスをつくる

取り組む社会課題の決定
衣食住の一つである食には多くの社会課題が生まれる、また社会の変化など大きく影響する。2020年ではCOVID-19が大流行した、食ではフードデリバリーが増えるなど変化をもたらした、そこで食に関わる社会問題の調査を始めた。
課題を調査する中でフードデリバリーの流行によってプラスチックゴミの増加していることがわかった。この問題から取り組む社会課題『フードデリバリーの増加によるプラスチックゴミ問題』に決定した。

フィールドワーク
「消費者のゴミ問題に対する意識はあるのか」について消費者と飲食店にアンケート・インタビュー調査を行った。


結果、問題意識はあり、積極的には対策はしたいが、直接 的なメリットがないとなかなか取り組みづらいということがわかった。そこでユーザーがサービスを利用することでメリットがあり、かつプラスチックゴミの問題を解決できるフードデリバリーサービスの検討することにした。
既存サービスについて
フードデリバリーサービスの収益モデル
・フードデリバリーサービスは主に注文した商品の手数料から収益を得ていることがわかった。
ユーザーの支払う料金=配達料+商品代
サービスの収益=商品代×手数料
※飲食店は手数料を考慮し料金設定を行っている。
事例調査
プラスチックゴミの問題に取り組む事例を調査した。
「Loop」
日用品の容器を再利用可能な耐久性の高い容器に置き換え、プラスチックゴミの削減に取り組むサービス。使い終わった容器は回収し、洗浄・補充した上で再び販売されるという新しいショッピングシステムの運用が2021年から日本で運用を開始した。
容器は短期的にはコストが高いが長期的に見るとコストが抑えられる。また、容器のデザインにもコストを割くことができる。
【参照サイト】https://exploreloop.com/
「京都市のリユース食器助成」
京都市ではイベントでリユース食器を利用した際の導入経費に対する助成を実施している。
【参照サイト】https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000099830.html
「出前を行う飲食店」
出前を行っている飲食店では再利用可能な容器を利用していることがある。
使い終わった容器は後日、飲食店側が回収に向かう。
「生分解性プラスチック」
生分解性プラスチックとは微生物の働きによって分解にかかる時間が短縮されたプラスチック。
従来のプラスチックでは分解に数百年かかるが、これは3〜6ヶ月で分解される。しかし、分解の速度は環境に大きく影響される。微生物が少ない環境ではそれ以上の時間がかかる。

環境に負荷をかけないことを前提にサービスを検討した。
容器の材質
プラスチックゴミを削減する方法を3つ挙げ、今回の課題解決のためのアイディエーションを行った。
・容器に生分解性プラスチックを使う
・容器に紙を使う
・容器に再利用可能なものを使う
生分解性プラスチックは従来のプラスチックに比べ分解時間は短縮されているが、現在の技術では分解にかかる時間がまだ長く、フードデリバリーサービスで利用するには削減が追いつかないと考えた。また、回収方法も確立していないため今回のサービスで利用するのは難しいと判断した。
紙製の容器については水分量の多い料理には不向きで、利用可能な容器が制限されてしまう。今回のサービスでは様々な料理に使うことを想定すると利用するのは難しいと判断した。
再利用可能な容器を利用する事例は多く、環境への負荷が少ないため今回のサービスで利用できる可能性があると判断し、再利用可能な容器でのサービスについて検討を始めた。
サービスモデル
再利用可能な容器を使うことで従来のフードデリバリーサービスと異なる点を挙げた。
・容器の回収作業
・容器の洗浄作業
・容器を店舗に分配
などがあり、以上の点を踏まえ3点の内容を検討した。
1.容器を循環させるための方法
2.容器が循環するサービスモデル
3.現行のフードデリバリーサービスより使いたいと思える価値の提供
1.容器の回収には回収は配達員に行ってもらい、洗浄は店舗で行ってもらうことにした。事例で挙げた出前の回収の部分を配達員が行うシステムになっている。飲食店側の負担が増える可能性を考慮し、容器にかかる費用は他のステークホルダーに負担できないか検討した。
2.そこで容器が循環する特徴を活かし、広告を掲載しステークホルダーに新しく広告掲載の企業含めることにした。容器は耐久性の高いものを使用しているため、そこに広告を使う価値があると考えた。広告の掲載料を管理費などに当てることで飲食店側に負担をかけずに容器を提供できると考えた。
3.さらに新しく加えたステークホルダーである企業と消費者の関係に着目し、その二者のタッチポイントとして情報とクーポンのやりとりを加えた。そこでユーザーへの提供価値を高めた、また、企業側への提供価値も高めることができた。

事業性について
delicle の主な事業内容はフードデリバリーの配達員、飲食店、注文者の仲介プラットフォ ームの運営とリユース容器の広告の掲載の 2 つがある。以下利益計画等を示している。
フードデリバリー事業は客単価 2300 円で注文者の支払った料金の 40%が delicle の売り上げになる。本事業は配達員の確保を考慮し、東京からは始め、全国に展開していくこと目標とした。





UIデザイン
私はデザイン面で主にUIを担当した。このサービスでは既 存のサービスと異なるUIのフローが2点ある。
1点目はアンケート機能である。アンケートは注文が完了後の待ち時間を提示した画面で答えるか、答えないか選択する。アンケートにはアンケートを受けるメリットも改めて提示することで、企業とユーザーのインタラクションを促進している。また、容器の返却し忘れが想定されるため、アンケート回答後に容器を返却することでデポジットととしてクーポンが発行されることをリマインドしている。


2点目は返却機能である。このサービスでは容器の返却を忘れてしまう可能性が高いため、何度か返却リマインドの機会を設けている。商品を受け取ったあと再びスマートフォンを開くと、アイコン部分に通知が来るようにした。開くと返却申請の通知を表示する。


返却の方法は申請を行なった後に玄関に容器を置き、ガイドに沿って容器を撮影、回収員が容器を回収する。回収後にアプリを開くとデポジットクーポンの発行の発行通知が来るように設定した。

